ノンアメリカニゼーション。

ごく普通の日本人がアメリカの田舎で生きていく記録。


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ごく普通の日本人がアメリカで生きていく記録。


アメリカの大学院:博士課程(Ph.D.)カリキュラム編

アメリカに来てから早いもので3年が経とうとしています.以前からアメリカの大学院に関する記事を書いているのですが,今回は博士課程の学生がアメリカの大学院で実際何をやっているのか,具体的なカリキュラムを時系列でまとめていきたいと思います.


ちなみに筆者は現在,Industrial Engineering(経営工学)専攻の博士課程(Ph.D.)の学生です.アメリカの場合,学校・学部・学科によってカリキュラムに差があるので注意.気になる大学がある人は,各自大学のウェブサイト等で調べてみてください.


入学・オリエンテーション

渡米して最初の学期が始まる前に,まずは色んなオリエンテーションを受ける必要がある.

などなど...


他にも細かいオリエンテーションがあるため,この時期は特に大学用のメールアドレスをこまめにチェックすることが大切.大事なオリエンテーションを逃してしまうと後々面倒くさいことになりかねないので要注意.たまに,オリエンテーションの日程がかぶっていたりすることもあるため,そのような場合は早めに連絡し,どのような対策を取ればよいのか事前に相談しておこう.

学科のオリエンテーションで友達を作っておくと,この先長い博士課程の間,気軽に相談しあっていけるのでオススメ.ちょこっと勇気を出して声をかけてみよう.

授業

入学して1~2年の間は,授業を取る必要がある.学科ごとに,必要授業単位数・必修科目等,ルールが定められているので,よく確認して履修するようにしよう.ただし,そのルールも年度によって変わったりすることもあるため,学科の担当者に聞いて正確な情報を得ることを心掛けてほしい.ちなみに,GPAが3~3.5を下回ると退学になってしまうので,最低でも半分以上のクラスでAをキープしなければならない.

アメリカの大学院の授業については以前書いたこの記事をぜひ読んでみてほしい.

Qualifying Exam(博士課程基礎力試験)

必修の授業が取り終わるころ(入学から約1年後)に,Qualifying Examというものを受験する必要がある.これは,これから博士課程で研究をしていくにあたって必要な知識が身についているかを測る試験.試験内容・形態は,学科により様々であるが,基本的に筆記試験・口頭試験が行われ,必修科目で学んだこととその応用が主な試験内容になっている.

Qualifying Examに合格できないと,その時点で博士課程に残る資格はないと判断され,お情けで修士号をもらって大学を去ることになる.非常にシビアではあるが,大学院の質を維持するという面では合理的なシステムに思う.まぁ,なんともアメリカらしいシステム.

俺の学科の場合,筆記試験のみで,2時間×3科目=6時間の試験だった.試験の難易度は,授業の期末試験に比べてかなり難しく,相当時間をかけて勉強してきた人でも完答できた人はいないようだった.俺の代は無事全員合格できたのだが,聞いた話では,代によっては50%の学生が落ちて退学になった年度もあったのだとか...みんな勉強しようね!

研究

博士課程の大部分を占めるのが,自分の専門分野の研究だ.研究に関しては,専門分野・指導教授によって全く方針が異なる.基本的には,1年目に論文を読み漁り自分の研究分野を決めて知識をつけていき,その後3~5年間かけて,研究成果を出していく.論文をジャーナルに投稿したり,学会発表をするのも,博士課程の学生としては大事な仕事になってくる.学科によって卒業要件に指定されている場合もあるので,オリエンテーション等でしっかり確認しておこう.

重要なのは,指導教授としっかりコミュニケーションを取ること.研究経験が豊富な教授は,研究のヒントや方向修正をしてくれる.何より,人と自分の研究内容をディスカッションすることで,新しいアイディアに気づいたりすることもできる.

俺の教授は本当に学生をよく見てくれる教授で,最低でも週1回は個人ミーティングに1~2時間ほど時間を取ってくれる.さらに,教授の意向で研究室全体でのミーティングもあり,そこで他のメンバーの研究内容についても詳しく触れることができ,新しい発見をすることも少なくない.やっぱり博士課程において,良い指導教授に巡り会えるかどうかは非常に重要.お金に余裕があったら,受験前に大学を訪問し,教授・学生とコミュニケーションを取ってみることをオススメする.

Research Proposal(研究提案)

研究をある程度進めていくと,Research Proposalを提出し,口頭試験を行う必要がある.これは,Dissertation(博士論文)のための研究計画書・プレゼンテーションであり,実際に卒業までにどのような研究をしていくか,具体的な内容を更に詰めていくために行う.口頭試験では,教授陣からたくさんの質問・反論・提案が飛んでくるので,事前にしっかり内容を詰めていないとプレゼン中にどんどんボロが出てきてしまう.Research Proposalで発表したことと,その口頭試験で教授陣から得た新たな見解を基に,これから卒業まで研究を進めていくことになる.

これも学校・学科により様々だが,基本的にResearch Proposalはかなり厳しく審査される傾向にあると思う.仮に研究の方向性が間違っていれば,この時点で修正する必要があるため,口頭試験でかなり詳しいところまで突っ込んで質問される.勿論内容がひどい場合は,もう一度やり直しになる可能性もある.ただ日頃から指導教授としっかりコミュニケーションを取って研究を進めていれば,そこまでひどいProposalになることはないだろう.

ちなみに俺は現在大学院3年目が終わるところ.今年の冬,または来年の春を目安にProposalを提出する予定.また口頭試験が終わった際には,どんな感じだったか記事を書く予定.

Dissertation Defense(卒業試験)

3~5年の研究を終えて博士論文を書き終えると,最後にDefenseという口頭試験が待っている.自分の博士課程での研究成果をプレゼンにまとめ,教授陣・学生の前で発表する.Proposalと同様聴衆から色々な質問が飛んでくるが,ここまで研究した学生なら,自信を持って質問に答えさえすれば不合格になることはないはず.Defenseでもらった質問・反論・提案等を基に博士論文に多少の修正を加え,提出を終えれば晴れて卒業になる.

俺の学科では,学部卒で博士を取りに来た人は平均5年,修士卒で博士を取りに来た人は平均4年程度でDefenseを終えて博士号を取得している.勿論各々の努力次第でこの期間は大きく変わるが,大体この程度を目安に研究のペースを作っていくと良いだろう.ちなみに俺は修士号は持っていないので,あと2年程度で卒業するのを目標に日々研究に励んでいる.

卒業式

博士論文を提出し終わったら,晴れて卒業式を迎えることになる.俺の大学では,自分の指導教授から直接学位記を手渡されるのが慣習になっている.母国にいる家族を招待する留学生も多い.大学でできた友達を呼んだりして,みんなで卒業を祝う.

卒業後は企業就職だったり教授職だったりポスドクだったり人それぞれ.ほぼみんな卒業したあとは大学がある街を離れるため,卒業式のあとに卒業おめでとう&送別会を開いたりすることも多い.あー,早くこの日を迎えたい...



いかがだったでしょうか?博士課程の入学から卒業までを時系列に並べてみました.こう見ると,俺自身まだまだ大変な試験が残っているなーって印象ですね.授業はすべて取り終えたので,ここから更に研究に力を注いで行きたいと思います.前述の通り,カリキュラムは学校によってかなり差があるため,詳細は各々の学校のWebページ等を参考にしてください.質問等ありましたら,ぜひコメント欄からお願いします.